柳本浩市

アーキヴィスト/デザイン・プロデューサー

個人的にアーカイブを扱う立場から申し上げると、こういったアーカイブに対して考えるのは、このデータを今後どうやって役立てていくかが大きな意味を持ってくる。

 

阪神淡路大震災後にまとめられたこのタイムラインマッピングと近年起こった東日本大震災のタイムラインを比較していくと、必要とされるプロジェクトのタイミングが見えてくる。2つの震災は被害の内容や性質が違うものの、被災者の精神的な部分は大きく変わらないだろう。例えば仮設住宅はどのくらいのタイミングで必要となるか、仮設から本住居に移転するのはどのタイミングなのかなど、物理的・精神的な面で被災者のニーズと実際の立ち上げのタイミングが見てとれるだろう。ライフラインとは直接関係ないアートイベントに関しても精神的解放としては重要な要素だと考えられる。人間が持ち得る基本的な欲求の時間軸と対外的なプロジェクトの時間軸との整合性をとることが今後の震災の際のプロジェクトの立ち上げに大いに利用出来る価値を持っている。

 

一方でアーカイブのタイムラインから見えるプロジェクトの意味性も重要であろう。長期間継続しているもの、プロジェクト自体は短期間だが定期的に長期に渡って行われているもの、短期で終了してしまったもの。

特に短期で終わってしまったプロジェクトに関してはその理由を検証する必要がある。プロジェクト自体が短期でのみ役割を持つものなのか?予算などの問題により終了せざるを得なかったのか?そもそも被災者に伝わらない自己満足のものだったのか?

この検証こそが、今後のプロジェクトに教訓として活かされるであろう。

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