曽我部昌史

建築家/みかんぐみ

年表上にちりばめられる色とりどりのマークにカーソルを合わせる。何気なくクリックした緑色の四角は、壊滅的な被災をした長田地区が、逆境を逆手に「新長田まちづくり株式会社」を設立したことを紹介するマークだった。次にたどり着いたピンクの丸印は、被災後の様子をスケッチにおさめ続けた画家が若くして亡くなったことを伝えていた。それぞれに感銘を受け、何かしらを考え始めるきっかけを得る。内容は多岐にわたるけれど、マークの大きさは一緒。ダイナミックな活動もささやかな活動も等価に扱われているから、その相互関係におのずと意識が向かう。年表上のマークを彷徨っているうちに、誰かの生い立ちを辿っているような感覚になってきた。いろいろな活動が一つの大きなまとまりをもった流れに見えてきたからだ。

東日本大震災後、いろいろなことに関わってきた。自らの活動の非力さを痛感することも少なくない。個人の力に限界があるのは当然だけれど、だからといって大きな仕組みに与するばかりではいけないのではないかとも思ってきた。そういう気持ちを持ってこの年表の大きな流れを感じると、一人一人のささやかな活動でも流れの中の一つの役割を担っていることに気づかされて、少し元気になった。

活動のピックアップに特別な意図が働いていないように思えることも、この年表の特徴だといえる。生のデータを片っ端から放り込んでいける記録媒体のようなものだから、種々の活動をアーカイブ化のためのプラットフォームと捉えることもできる。提案なのだけれど、ウィキペディアのようにデータの更新を公開してはどうだろうか。この年表がもっとたくさんのマークの集合になって、活動の総体を把握することすら難しいくらいになればいいと思う。

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