水野 祐

弁護士/Arts and Law代表理事、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン

著作権やインターネット関連の情報法を専門とする法律家として、このような幅広い震災関連の情報が広く市民に公開されること、そして、それがビジュアル化されることの重要性を感じている。

海外では「オープンガバメント」や「オープンデータ」という、政府情報等を広く市民に利用しやすい形で公開していくという流れが起きている。この年表は、デザイナーなどのクリエイティブ分野で活動している人たちが作成したものだが、本来は政府が作成・公開すべきものではないか。この年表は、そのような情報公開においても、単に情報を公開するだけではなく、市民にわかりやすく情報を可視化し、使いやすく汎用性がある形で提示することが肝要であることを示している。

 

個人的にもっとも重要だと感じたのは、年表の一番下に位置する「震災後の主な動き」において、法律や行政に関する記載が圧倒的に少ない、という事実である。これは震災関連の法律や行政の動きが少なかったわけではなく、この年表を作成している運営側・情報提供者側にそのような情報に明るい専門家が乏しかったからであろう。この記載の少なさこそが、まさにクリエイティブ分野と法律・行政の分野との間の距離感を顕在化させてしまっているのではないか?ぼくはそう考えている。法律家が、クリエイティブと法律・行政との間でやれること、やるべきことはまだまだある。この年表はそのような事実も浮き彫りにしているように思える。

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