鎮魂・癒し→体験・記憶の表現へ
震災直後には鎮魂・癒しの意味を込めた表現が多く、時間の経過とともに、体験や記憶を残し、伝えていく表現へ。
震災の年、10年後、15年後に集中
特に1995年、2005年、2010年の活動が多く、震災復興記念事業として予算がついたためだと思われる。2000年にも予算が組まれただろうと思われるのに、意外と事例数が少ない。
現場の記録から、想いの表現へ
震災直後は現場の記録・写真が多かったが、個人的な表現としての作品発表がだんだん目立っていった。
作家自身が被災者
作家/表現者自身が被災者、という事例が多い。
チャリティー、鎮魂を目的に
チャリティー、鎮魂の意味をこめたコンサートや 作曲が多い。
多様な演奏会やチャリティイベント、ワークショップなどが震災直後の1995~96年に集中して開催された。震災後5年、10年という節目に開催数が増えたのは、国や自治体からの復興事業費が下りてきたことも関係しているだろう。自立したオルタナティブな活動を目指そうという意志が広く芽吹きはじめたバブル崩壊の時期と重なり、活動の源となる意志やアイデアを継続性のあるかたちにするため、非営利団体がいくつも組織された。神戸文化復興基金(アート・エイド・神戸、1995~2002年)の音楽や美術など、ジャンルを越えて意志のある人たちのエネルギーを結実させるためのサポート体制の整備などは、社会の仕組みを熟知する人物が中心になることで実現したケースもある。こうした動向はNPO法案の成立を牽引、任意団体を法人化する動きにもつながっていった。
長期的な視点での支援や育成が必要な芸術の分野では、それを受容する側への配慮、支援も短期スパンで考えてはならず、継続的な活動の主体や拠点となる基盤整備が必要である。自然災害の多い日本では、文化庁を中心に文化財等救援委員会(通称:文化財レスキュー隊)が結成され、全国美術館会議のような専門家集団による被災地での文化資源救済活動など、組織的で持続性のある活動が重視されるようになった。震災を契機として、日本に欠けていた文化資源への支援の仕組みも創出された。